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2009.03.26

吾輩は患者である (ワーファリンと鼻血)

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(春の日の花と輝く)

吾輩は患者である   (ワーファリンと鼻血)

吾輩は患者である。 寿命はまだある。 吾が心臓には、二つの人工(器械)弁が装着されている。 人工弁を装着してから、既にして38年が経っている。 その意味では、臨床的につまり医師の立場から見ても、珍しく貴重な存在である。 何よりも患者自身がそう思っているのである。

38年前に思い切って、人工弁装着手術を受けていなかったら、その時点で、私はこの地球からは消えていたことであろうから、手術は「生存」のためには絶対必要条件であったのである。 当時、神戸大学の麻田教授の御執刀を得て、私は甦らせて戴いた。

爾後これまで、38年の間には、いろいろと臨床試験があり、また再手術、三回目の手術そして4回目の手術を経験した。 回を重ねるごとに人工弁は改良され、医師の心臓血管外科手術の技法も進歩した。 これは吾輩にとっては救いであり、希望であった。

が、一つ変わらないことがある。 人工(器械)弁を装着すると、その弁を赤血球が通過するとき、どうしても、物理的に、赤血球が壊されるのである(LDH値の上昇)。 従って、血中の赤血球数が減少してしまう。 それでも若い頃は、血液の生産が活発に行われるので、日常生活には支障はない。

が、今の年齢、後期高齢者ともなると、そして、人工弁が二つもあると、赤血球の破壊される量が多く、生産される量が、頑張ってはいるが、補充するレベルまでには達しない。 従って、日常的に貧血状態が進み、改善されることがない。

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加えて、人工弁装着した患者の血液中では、赤血球の破壊や凝集により、「血栓」が生じやすい。 これは、脳梗塞や血栓性静脈炎などの重症を引き起こす原因になるので、一般に世界中何処でも、患者には血液凝固阻止剤として「ワーファリン」を服用させることになっている。 吾輩も38年前からその服用を続けてきている。 この服用を真面目に実行すれば、確かに「血栓」の発生は防がれる。 

が、その服用は、換言すれば、血液が固まらなくなる、と言う弊害がある。 つまり出血が止まらなくなるのである。 
内出血のアザが、自身では記憶がないのに、体の至る所に現れることがある。 それでもアザぐらいなら我慢は出来る。

しかし、後期高齢者ともなると、鼻の毛細管が脆くなってきている所為か、やたらと鼻出血の頻度が繁くなる。 鼻血が止まらない。 自身の鼻孔よりぬるぬるした、そしてどろどろの紅色の粘液が出だして止まらないとき、人間は誰しもパニックになる。 血圧は急上昇し、瀕脈が激しい。 血圧計で測ると、200/100、 脈拍 150 と言うことになる。 これでは、余計に出血は激しくなる。 自身では、また家庭内処置では、救いようがない。 ので、救急車を呼ぶ羽目となる。 大変なことである。 通常、救急部屋で、救急の医師により、出血部位を電気メスで焼き、止血してもらうことになる。 吾輩の場合、この事態が、例えば、今月は2回も起こった。 正に恐怖である。 

もともと赤血球が不足しているのに、鼻出血で、大量の失血があると、ますます貧血となり、ゆっくり歩くのがやっとという状態になる。 当然この日はワーファリンは服用する気にはならない。 次の日も服用に恐怖を感ずる。 が、血栓症の恐怖があるから、止めるわけにはいかない。 ギリギリの強いストレスである。

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ワーファリンの効果は普通2~3日後に現れる。 同じように、服用を中止してもワーファリンの血液凝固阻止作用は、すぐには止まらない。 ので、鼻出血があったからとて、その時点で、ワーファリンの服用を止めても鼻血はすぐには止まらない。 
さりとて、鼻血を止める特効薬的服用薬もない。 無いことはないが、少なくとも特効薬ではない。 また、例えばトランサミンと言う薬品は、鼻血を止めるに有効とされているが、実際には、血栓を溶解するプラスミンを阻害するものであるので、逆に血栓の危険性を高めることになる。

患者は鼻血をとるか血栓をとるか、その選択を迫られることになる。 当然、鼻血で即死することはないが、血栓では致命的な障害を受ける危険性が高いから、鼻血は辛抱しようと言うことになる。

が、貧血状態の患者にとっては、止めどない鼻出血は、身を切られる恐怖である。 

吾輩は患者である。
患者の立場として言うなれば、日本の医学界は、既に50年の歴史があるという古いクスリ、そして服用の調節が難しいクスリ(後期高齢者であれば、INR値は2.0前後が望ましいとされている)、ワーファリンに何時までも執着せず、即効性のある有効な薬品の開発、実用化をこそ急ぐべきである。
 
現実に今、その目的のために、世界ではキシメラガトラン (Ximelagatran) という新薬が開発され、欧州の一部の国では臨床に利用されていると聞いている。 
我が国でも早急に臨床での利用を研究し、進めるべきではないのか。

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要望はするが、日本の今の行政では、吾輩の生存中に、それが実現するかどうかは疑わしい、と思ってしまう。
であるなれば次善の策として、緊急的に造血ホルモン エリスロポイエチン の利用がよいのかも知れない。 嘗てドーピング剤として話題になったものである。 良識ある医師に相談してみよう。 
 

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2009.03.24

大銀杏

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(写真は鷺森神社の境内)

大銀杏

私の氏神、鷺森神社の表参道には、子供の頃からその両側に、見上げるほどに大きな大銀杏の樹が、一本ずつ並び立っていた。 春になると、その大きな幹の間からも、小さな可愛い緑の新葉が萌えだして来る。 秋には大きな黄金色の葉がキラキラと輝き、そして、秋風に乗ってひらひらと降っていた。 積もっていた。

その大銀杏の樹が今年、二本とも、まだ元気なのに、根元から伐採されてしまった。 これは悲しい。 参道近くの農家の人や、或いは参道傍の民家の人達が、大銀杏からの秋の落葉の始末に困ってのことだろうと、想像されるが、大銀杏の樹が見られなくなった、鷺森神社の参道は、益々見窄らしくなってきている。 これが私達、昔の姿を知る者にとっては、実に悲しいのだ。

君知るや 伐り倒され行く 大銀杏 その新緑を その黄金色を

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 (写真はその大銀杏の大年輪)
 

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2009.03.17

海賊

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海賊

塩野七生女史の「ローマ亡き後の地中海世界」(上・下)を読み続けているが、実に興味深く、興奮の連続である。  この様な史実、実際、中世イスラム世界の歴史などについては、私の場合、中・高・大学時代を通じて、習学したことがなかっただけに、今にして目から鱗が落ちるような感じで、「ローマ亡き後の地中海世界」の現実に驚嘆している。

中世期、そして西欧では、ルネッサンスの時代、そのヨーロッパと北アフリカに囲まれた、地中海地域では、北アフリカ地域を占拠したイスラム勢力による、海賊行為は非道いというもの以上に残酷で激しかった。 と言うのも、その頃のイスラム勢力は、海賊行為そのものが彼等の生業であったからである。 その立地条件という背景もあったのかも知れないが、端的に「イスラム教を信仰しないものは、人間ではない。 家畜と同様である」との絶対的教えを支えとして、他国を襲撃し、略奪、破壊、殺人、人間の拉致を恣にしたのだった。 略奪してきた貴重な文化財、宝物、食糧は売買し、拉致してきた人間を奴隷として売買し、使役し、または人質として、身代金を要求した。 これが、その当時のイスラム海賊の生活であり、生業であったと言う。 

これに対する西欧側の守備、自衛、人質救済(救出修道会、救出騎士団)、更には、対イスラム海戦の状況、などなど歴史の残酷さ、人間の愚かさが眼に映るように面白いのである。 

先日やっとの事で、我が国の自衛艦も、ソマリヤ沖の海賊対策として派遣された。 今までは、他国の海軍に我が国の船舶を海賊から護ってもらっていた、と言うのだから、情け無い話である。 ソマリアの海賊達も、嘗てのイスラム海賊と同様に、海賊行為そのもので生計を立てているという。 海賊は、基本的に、自分より強そうな相手は襲わない。 無防備、或いは弱そうな相手に攻めかかるものである。 だから、強そうな自衛艦がそこに存在するだけで、その自衛艦派遣の意義はあるのである。 

それにしても、これだけ明白なことを決めるのに、我が国の国会は、何と無駄な時間を浪費したことか?! そして、今に至っても、まだ自衛鑑の派遣に反対する「文化人」が居るのだから、「腹が立つ」より「呆れて」しまう。   塩野七生女史の本を読んでもらいたいものだ。

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2009.03.11

Spring has come

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(写真は安藤さんよりご提供いただいたものです)

Spring has come.   Winter is gone.   The birds are singing on the trees.

これは私達が、確か中学校の時に習った英語の教科書の、冒頭にあった文章である。 一生懸命に(?)暗記したのが、今でも思い出される。 そして、今正に、時節はこの文章にピッタリの時候である。 朝起き出す頃、家の周りには、鳥たちの囀りが楽しい。 

もう50年も昔のことだが、友達を誘って、京都の比叡山での探鳥会に出掛けたことがあった。 京福電鉄、叡山電車と京都野鳥の会の主催であった。

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(昭和44年4月 発行) 

比叡山延暦寺の宿坊に泊まる。 当時の宿坊は今頃の立派なものでなく、本当にお坊さん用の質素なものだった、が、その夜は、野鳥の会の幹事の方から、比叡山の春の鳥たちについての、面白いお話しがあり、解説があった。 私にとっては専門外の分野だっただけに、正に「目から鱗が落ちる」感銘を受けたのだった。
 
翌朝、鳥たちが目覚める前の早朝3時過ぎに皆で起き出して、暗い山道を森の中へと進む。 頭上で、ムササビが飛んでいるのを見たのも初めてだった。 皆で耳を澄ませていると、一等最初に囀りだしたのは、この時、ヒガラの「チュベチュベ」だった。 まだ日の出前だから、姿は見えないが、幹事の方々から、囀りの特徴などについて教えてもらう。 ホトトギスが甲高い声で囀りながら、飛び回っている。 耳を澄ませると、遠くでは、「トラツグミ」の幽寂な鳴き声がしている。 この「ヒー ヒー」という鳴き声は、暗い山中もし一人だったら、寂しさが一層つのって、怖いことだろう。

やがてだんだんと東の方から、白み始める頃になると、新鮮な奥山の大気の中にあって、殆ど一斉に、鳥たちの囀りが始まる。 ラブソングの合唱である。 「ヤブサメ」が近くの草むらの中で旺んに囀る。 あっ!三光鳥が囀っている。 これは、今朝は、正にラッキーである。 三光鳥は、「ツキ、ヒ、ホシ ホイホイホイ」と囀るのでこの名前が付いている。 一度聞いたらもう忘れることのない囀声である。 その姿は、京都野鳥の会の機関誌の表紙を飾っている(上掲)。 続いて、「オオルリ」、「キビタキ」「コカワラヒワ」・・・と、鳥たちのコーラスが続くが、もうこうなると、一度には、覚えきれるものではない。 が、面白く、爽快で、感動的でさえあった。 

あれからすっかりやみつきになり、探鳥会には何度も参加した。 忘れ得ぬ いろいろな出会いがあった。 思い出は遙かに遠いが、この楽しい鳥たちの囀りが聞ける春が、今年も もう近い。 嬉しい春が近い。 

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2009.03.05

アエイオウ

アエイオウ

政界ではよくあることで、今更吃驚することでもないが、民主党の小沢代表が、政治献金の件で、今mediaの話題になっている。 昨日は、その小沢代表がテレビの前で、「自分は潔白です」との言辞を語っているところが映し出されていた。

法的に潔白なのかどうか、我々素人には判りかねるが、その話を聞いていて、また見ていて、なんともその弁明の話の中に、「アー」「エー」「イー」「オー」「ウー」の、接続語(?)が多いのには、御本人は真面目なだけに、失礼だが、笑えてしまった。 ともかく、「アエイオウ」の接続語(?)があれだけ多いと、結局肝心の弁明の言葉に迫力というものが無く、聞き終わっても、何を言っていたのかさえ判じかねるぐらいだった。

「ア、エ、イ、オ、ウ」は、コーラスや、詩吟の一等最初の声だし練習に、いつもしていたので、その時のことが思い出されてくるのである。 小沢さんは案外、歌は上手いのかも知れないですね。

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2009.03.03

おひなさま

おひなさま

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ひなまつり

今日の京都洛北は、霙混じりの雨降りで寒い。 比叡山の頭は白くなっている。 それでも今日は ひなまつり と言うことで、あちらこちらでイベントが多いようだ。 
この時期の特徴は、しかしながらティッシュの使用量が多いことだ。 花粉症なのか、老齢の所為なのか、徒に鼻水が出る。 私の場合は、その鼻水に、ハナジが混じっていることが多いので、余計に憂鬱である。  とにかくティッシュの消費量は凄まじいほどである。 

それにしても、今の世では、ティッシュという便利な物があるので、大いに救われる。 昔は、と言っても私の幼い頃から終戦後しばらくの間は、まだティッシュという便利なものはなく、人々はゴワゴワの落とし紙か、或いは新聞紙で代用していたものだった。 実際、駅の「便所」(トイレとはまだ言わず、せいぜいWC)などでよく使われていた。 勿論当時のこととて、便所は水洗式ではなく、大便所は土壺型式であった。

大阪の名門校、大阪府立大学がまだ浪速大学と言われていた頃、この大学に有名教授が居られた。 名前を今、A教授としておこう。 A教授が通勤途中、たまたま便意を催して、
中百舌鳥の駅便所に入ったとき、たまたま下を観察すると、大便所の土壺の中の新聞紙が赤く染まっているのを発見された。 

A教授はこの現象を不思議に思い、その赤色現象の由来について研究されたのである。 その結果を簡単に紹介すると、この赤の発色は、糞便中のタンパク質中に含まれているトリプトファンというアミノ酸が、長期間に亘り、微生物により酸化分解される際の、中間産物(キヌレニン)であることを確認されたのであった。

昔式の便所なればこそ出来た研究であり、発見である。 

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